ふきよせるかぜになびく文

根無し草の戯れ言です。労働とか文化とか。

またベイスターズのファンになる

 1ヶ月ほど日本を離れている間に横浜DeNAベイスターズの2018シーズンが終わっていた。

 今は本当に便利で、海外にいても経過や結果を知れるどころか、試合の生中継が無料でネット配信されている。時間が合えばちょこちょこスマホタブレットで観戦していた。日テレの巨人戦とtvk(テレビ神奈川)で放送する主催試合の一部しか見られなかった時代を知る身としては、ありがたいを通り越えて「いいの?」という感慨である。余談だが、ベイスターズは年に1度、平塚球場で1軍の公式戦があったのだけど、tvkはその中継さえしない年があった(横浜から平塚までは車で1時間ちょっとの距離なのだが……)。北海道の放送局が日ハムの交流戦のときハマスタまで中継を結んでいるのを知り歯噛みしたものだ。

 異国の地からベイスターズの試合が観られる!

 だが応援に熱が入らない。図ったわけではないが、CSに間に合うように帰国する予定になっていた。でも何としてでも3位に滑り込んで欲しいという気持ちにならないのだ。

 なぜかといば、自分が離職中で贔屓のプロ野球チームを応援しているような状況ではない、ということで話は終わるのだが、それでは書くことがない。

 だけど、ちょうどいいことにもうひとつ理由に心当たりがあった。簡単なことである。僕は「横浜DeNAベイスターズ'18」のファンじゃなかったようなのだ。

 試みに最近のモーニング娘。のような言い方をしてみたが、モー娘。の熱烈なファンは、年が変わったという理由だけで急に熱が冷めることはないだろう。僕だって年も変わったことだし、今年は阪神を応援しよう!などと無節操に宗旨替えを行うわけではない。だがラミレス新監督を迎えて初のCSに進出した2016年、CSで広島を破り日本シリーズの舞台でソフトバンクと死闘を演じた2017年に心踊りすぎたのだ。最後までついぞチームへの思い入れを持ちきれなかったことと、近年の躍進は決して無関係ではない。

 長い長い低迷期を経て日本シリーズに進んだ昨シーズンは「弱いチームが強くなるまで」という典型的なサクセスストーリーの最終章だった。リーグ優勝、日本一こそ逃したけど、それがひとつの区切りだったことに違いはない。『スラムダンク』が全国優勝して完結したわけではないように。

 これが映画だったなら数年後に配役と舞台設定と監督を変えてリブート作品を作れば済むのだが、プロ野球には来シーズンがある。

 当然のことながらシーズンが変わればチーム編成も変わる。レギュラー級の選手がトレードやFAでチームを離れることも珍しくない。アイドルグループにも卒業はつきものだが、古参のメンバーが戦力外通告を受けて脱退したり、白石麻衣がFA宣言しても「もクロ」に移籍したりすることはない。

 そうは言っても30代を迎える前にほとんどのメンバーが卒業するアイドルグループの方が組織としての代謝は速い気もする。だが調べるとプロ野球選手の平均引退年齢は29歳。偶然なのか両者のプレーヤーとしての寿命は似ている。属する集団の血の入れ替えのペースも然りだろう。その上で、結果を残せなければ契約の更新をつかめないプロ野球の世界はより過酷な面がある。重みは違えど、それはファンにとっても。

 もちろん人間の細胞が日々入れ替わっても私は私であるように、登録選手の一部が変わってもベイスターズというチームは青く存在し続ける。

 それでも僕の場合、1年をかけて好きになったチームのリセット感を禁じ得ない。少なからずの熱量は確実に失われる。だから毎年、シーズン序盤はチームの勝敗にわりと無頓着になっている。

 試合の中で見せる一所懸命なプレーやチームワーク、勝利への執念……新しいシーズンを迎えた選手たちのグラウンドでの躍動によって、その年のDeNAベイスターズへの親愛の気持ちは醸成されていく。そう、時間がかかるのだ。

 一昨年、去年、もっといえば中畑監督時代も強くなかったけれど、シーズンが進んでいくうちにチームが少しずつ変わっていくという実感があって、それが僕のベイスターズへの熱量になっていった。

 もちろん今シーズンの選手たちの姿を、勝ちへの執着が見えないとか、去年日本シリーズまで行って気が抜けていたなどと批難するつもりはない。要するにある意味で夢を見てしまった昨シーズンの影響で例年より余計に失われた熱量を取り戻すほどのプラスアルファの要素がなかったのだ。その不足分は単純に去年より強ければ補うことができたかもしれず、結局「来年こそ優勝だ!」と、自分が愛すべきプロ野球ファンであることを再確認している。

 黄色く染まり出す街路樹。秋季キャンプは近い。